アドビ株式会社Adobe Express SEO担当 加納宏徳氏 × 小川 卓 対談 第2回 提案型ウェブアナリスト育成講座と分析ツール談義

2022年11月03日

提案型ウェブアナリスト卒業生対談企画 加納宏徳氏・小川卓

第21回のお相手は、小川卓主宰の提案型ウェブアナリスト育成講座第8期卒業生でアドビ株式会社の加納宏徳氏。全3回でお届けします。
※本対談は2022年9月に行われました。

第2回 提案型ウェブアナリスト育成講座と分析ツール談義

前回の記事では、加納さんが小卒からウェブマーケの世界に進んだプロフィールについて聞きました。全3回の2回目となる今回は、加納さんが代理店時代に受けた提案型ウェブアナリスト育成講座についてや加納さんのアドビでの役割、小川さんがリクルート時代に経験したAdobe Analytics導入談等を話します。

対談のお相手

加納宏徳
かのうひろのり

加納宏徳(かのうひろのり)

アドビ株式会社 Adobe Express SEO担当

10歳で折り紙世界チャンピオンに。2016年伝統工芸品の越境ECサイトのウェブ担当、スタートアップ企業、代理店を経て、2022年よりアドビ株式会社にてAdobe ExpressのSEO担当を担う。提案型ウェブアナリスト育成講座第8期卒業。加納宏徳のポートフォリオサイト:https://hirokano.com/

進行役はエスファクトリーウェブディレクター兼HAPPY ANALYTICS 広報の井水(イミトモ)が務めます。

提案型ウェブアナリスト育成講座で学ぶ「DMAIC」

小川

講座が始まって、どうでした?

加納

最初の1、2回はGoogleアナリティクスとは関係ないビジネス寄りの内容だったので、「こういうところから入るんだ!」と思いました。フリーランス時代に要件定義の大切さが身にしみていたのでフムフムと。

小川

ビジネスロードマップやゴールとKPIの設定と、コンセプトダイアグラムも作ったよね。

加納

なんとなく小川さんの講座はもっとテクニカルな内容をゴリゴリ話すイメージだったんですよね。実際に後半ではセグメントなどそういう回もあったんですけど、第1回、第2回はそもそも分析はじめる前に知っておかないと、交通事故が起きちゃうような内容なのかなと。

小川

そうだね。DMAICでいう最初の「Define」の部分で、KPIの設定やコンセプトダイアグラムをやりましたね。
DMAIC

加納

分析前の部分をこんなに時間かけてやるんだなと。

小川

イメージとしては、「提案型ウェブアナリスト」の「提案型」を考えると、プランニングやゴール設計でどういうデータを取るべきか、どんなユーザーを増やしていくべきかという話ができるようにしておかないと、「ただデータを集計して分析する人」になってしまう、だからDMAICを通してやりたいなと。

加納

それがきちんとできたら、コンサルタントですよね。

小川

お客さんの売上を上げるということを考えると、分析だけではなくて、その前や後も大事だなと。いくら分析を頑張ってExcelの表を送りつけたとしても、誰も見てくれないわけだからね(笑)

井水

DMAICのDの部分でKPIの設定やコンセプトダイアグラムを学んだわけですが、加納さんが今のお仕事に活かせていることは?

加納

代理店にいた時は、「なんでみんなこういうベーシックなこと(要件定義やKPI設定)をやらないのかな?」と思っていたんですけど、転職して事業会社に入ったら自分がぜんぜんできてないと気づくこともあって(笑)。
「これをやろう!」というアイデアができたら、細かいことを決めずにいったん進めるほうが大事なタイミングもあるので。時間かけて完璧なプランを作るより、まず実行して結果をみて、その場で方向修正しながら走るほうが大事な局面もあり、特に外資だとそのスピードがめちゃくちゃ早いので、そこで実行しつつ、時折立ち止まって現状を整理する時に、講座で学んだことを活かせているなと思います。

セグメントの違い

小川

「Define」の回の後はGAセグメントのワークをやったよね。Adobe Analyticsでもセグメントがあるけど、分析する上ではセグメントって欠かせませんからね。

加納

アドビに入社してすぐAdobe Analyticsのセミナーをベーシック、アドバンスと受けたんですけど、セグメントの考え方は同じでしたね。操作は違いますが。

小川

セグメントのやり方はAdobe Analyticsの方が便利かも。

井水

私はGoogleアナリティクスしか触ったことがないんですけど、どう違うんですか?

加納

めっっっちゃ細かく設定できます。

小川

絞り込み条件が入れ子の入れ子みたいになるから大変。セグメントの中にセグメントを入れられるから。

井水

セグメントを入れ子にできるのは面白そう!

加納

入れ子の条件もすごく詳しく設定できますよね。

小川

そうそう、細かくできるよね。

加納

入れ子の概念を理解しておくと、ユーザーでセグメントを切った後にセッションでセグメントを指定して・・みたいな設定もできるんですよ。講座でユーザー、セッション、ヒットについてはさんざんやったので、当初は苦労しましたが、あれを真面目にやっておいてよかったなと。

井水

たしかに講座ではセグメントのワークをゴリゴリやる中で、「ユーザー」「セッション」「ヒット」の違いもがっつり身につきますよね。

GAのUA計測停止、GA4へ

加納

これはだれのせいでもないのですが、講座を受けたあとひとつショックだったのは、講座でしっかりGAを学んだ後に、UAがなくなるという発表があったことですね。

井水

加納さんは提案型ウェブアナリスト育成講座を第8期で受講したので、UAでやった最後の期なんですよね。

小川

第9期からはGA4でやっているからね。

加納

そうなんですか!

小川

2021年末にやった第8期の時ってタイミングが難しくて、GA4は出ていたけど、UA終了のアナウンスがまだ出ていなかったからね。当時使っているツールはまだUAの方が多かったじゃないですか。

加納

Googleさんから衝撃発表があったのは第8期が終わって数ヶ月してからでしたよね。
gaの計測停止スケジュール

(キャプション)2022年3月にGoogleからUA計測停止のスケジュールが発表されました。

小川

おっしゃるとおりでUAが終了するというアナウンスが出たタイミングでGA4に移った方がいいだろうと。第9期の頃には、上場企業のGA4導入率が35%になったので講座でもGA4でやるようになりました。

井水

あのアナウンスで空気が変わりましたよね。

小川

意外と早いぞ、14ヶ月ってあっという間だぞ、みたいな感じで。

加納

その後はGA4への移行祭りも・・

小川

そうそう、毎週のように変わるから。今GA4の本を書いて初稿は上がっているんだけどね。

※2022年10月21日発売されました!

井水

小川さんのTwitterでもよく投稿していますけど、変更のたびに小川さんが大変そうだなと(笑)

小川

原稿を直さないといけないからね。いっそのこと部数を1,000部におさえて、重版したら変えるってできたらいいなと。GA4はそうしないと無理、使えなくなるので。

井水

書くのがめちゃくちゃ大変そう。

小川

まぁ大変だけど差分を書けばいいだけだし、GA4ガイドも更新しているので。

GA4ガイド

top

加納

1年もするとまた大きく変わってそうですね。

はじめて触るAdobe Analytics

小川

Adobe Analyticsの本は何度か話題にあがったんだけど、無理だと思う。

加納

アドビに入ってAdobe Analyticsを勉強しよう、まずは本で・・と思ったら、本がないんですよ。

小川

ないですね。会社によって違いすぎるから、あれは無理。

井水

Adobe Analyticsって、そこまでカスタム仕様なんですか?

小川

カスタムが前提ですね。メニューもレイアウトも配置も全部変えられます。

井水

でもGA4でもレポート画面の並び順や内容をカスタマイズできるじゃないですか?

小川

GA4以上だね。GA4もカスタムできるけど、「レポート」「探索」というベースがあるじゃないですか。

井水

そのベースもないんですか!?

加納

メニューにディメンションや指標がたくさんあって、それを組み合わせるとダッシュボードが作れるんですよ。

小川

そのあたりはデータポータルみたいだよね。そう考えると、Adobe Analyticsって、データポータルに分析データのメニューがくっついた感じかな?

加納

たしかにGoogleデータポータルってデータ入力やセグメントも設定できるじゃないですか。その種類が3~4倍に増えたイメージですよね。

小川

Adobe Analyticsは導入前に設計をしっかりやらないと、データが取れないのが大変なんだよね。URLを取るのも自動じゃないから・・。

井水

それは実装が大変ですね。

小川

実装はリクルートの全社導入の時に2年やったけど、もう二度とやりたくない(笑)Adobe Analyticsの実装は外の人がポンときてできるものではないよね。アドビのコンサルの人とか代理店の人が入って、仕様書を作って進めていく感じ。

井水

加納さんはAdobe Analyticsは今分析する人として関わっているんですか?

加納

分析する側ですね。

アドビ社での役割

井水

加納さんのアドビでの役割って何でしたっけ?

加納

私の役割はAdobe ExpressというデザインツールのSEOを担当しています。アドビは基本的にはプロ向けのツールを提供している会社というイメージがあると思うんですけど、初心者にとっては高機能すぎて使いこなすのが難しいこともあるかと思います。そこでノンデザイナー向けのかんたんなツールを作ろうという流れで生まれたのがAdobe Expressです。

AdobeExpressのウェブサイト
https://www.adobe.com/jp/express/

加納

ウェブブラウザとスマホアプリがあり、イメージ的にはPowerPointのような操作感です。おしゃれなテンプレートが数多くあるのでかんたんにデザインが作れます。基本的に無料で使えて、月額1,078円の有料版では、いくつかの便利機能も使えるようになります。Adobe ExpressはAdobe Creative Cloudの有料版に含まれているので、追加費用なく使えます。

井水

なるほど。

加納

日本のSEO担当なので、日本人にわかりやすい内容になるよう、ページを最適化してより多くの方に知ってもらうのが主な仕事内容です。英語ページをただ直訳しただけでは、よくわからないカタカナ用語が並ぶような状態になってしまうので、できるだけひらがなを使ったり、自然な、わかりやすい言葉に言い換えたりしています。
実際に書き換えたページがいいパフォーマンスを出せているのか?と検証するのはアナリティクスを使って分析していますね。あとは問題あるページを見つけたり。

小川

自社サービスのSEOをしている感じだね。ちなみにアドビに入って驚いたこととかありました?

加納

最初の会社は30人、独立して3人、代理店が15人くらいの小さな規模だったんですけど、アドビの従業員数は世界で約2万人以上、日本だけでも550人くらいなので、まずは「でけぇ!」と。

小川

人数もだけど、大崎にある建物のビルもね!
アドビ社内エントランス風景写真
大崎にあるアドビオフィスのエントラン

加納

ええ。あとはマーケティングの部署が面白いです。マーケティング部署は顧客ライフサイクルの考え方で部署割りされていて、認知から購入、ファン化までそれぞれのカスタマージャーニーのステップに部署が分けられています。さらにそれぞれの部署に専門家がいて、「ここまで細分化された分野のプロフェッショナルがいるのか!」とワクワクしました。

井水

面白いですね。

加納

あとは、前職などでは人の入れ替わりが激しかったんですけど、アドビは「20年この仕事をやっています」という方もいて、聞けば何でも教えてくれるんですよ。そういう職人さんのような方と話せるのは面白いですね。

小川

プロフェッショナルの集まりという感じですね。いろんな分野からスキルがある人を集めて、各々KPIをもってやっていくという感じですよね。

加納

こういう会社の運営方法があるんだなと。前職で伝統工芸職人さんにインタビューしていたこともあり、職人的な働き方は好きだったのですが、分業制で専門分野を極める集団の一員になれたのは面白いな、と。

小川

加納さんの越境ECのウェブ担当時代みたいに、認知獲得から全部をひとりで回さなくてはいけない会社もあるし、様々ですよね。

井水

加納さんはひとりで何でも回さないといけないところから、分業制の会社に転職して、両方を経験しているわけですけど、やりやすくなりました?

加納

どんなKPIで評価されるか決まっているのは、とてもやりやすいですね。前職では主に売上でみられていたのですが、特にSEOはすぐに売上に結びつきづらい長期施策も多いため、苦しい状況だったこともありました。売上に少しでも貢献するべくSEO以外の施策をたくさん学んだことは今でも役に立っているので感謝はしていますが、純粋にSEOに集中できる環境はとても楽しいです。

小川

言い方が悪いかもしれないけど、自分の本業に集中できるというのはいいですね。

加納

あとは、隣接した部署の方から鋭い質問がポンポン飛んできたりするので、常に脳ミソフル回転です。例えば過去にはSEOも兼務していた広告部署の方もいたりと、ミーティングでもSEOの基礎知識を踏まえた、とっても踏み込んだ質問がポンポン飛んでくるんですよ。常に脳の回転速度が求められる感じがあって楽しいですね。

井水

いいですね。

加納

代理店時代は、お客様によっては「SEOとは」「アクセス解析とは」という話からはじめることもあり、それ以降の踏み込んだ話はできないこともあって。「SEOとは」という説明をすっ飛ばして、施策やコンテンツについて深い議論ができるのは楽しいなと

小川

相談できる相手がいたり、お互い高め合えられる相手がいたりするというのは、大きな会社ならではのメリットですね。社内では英語が飛び交ってます?

加納

ミーティングは半分以上英語ですね。

小川

そしたらドキュメントも英語になるよね。

加納

上司がオーストラリアにいるので。まだ会ったことはないですけどね。

小川

今はオフィスには行っているんですか?

加納

だいたい週に2~4回ですね。リモートも多いですが。

小川

今はリモートになるよね。

小川さんのAdobe Analytics導入談

小川

アドビさんにはリクルートに在籍していた頃に何度か行ったり、その後に登壇依頼をいただいたりしたので、何度か行きましたね。Adobe Summitという海外のイベントがあったので、そこでSUUMOの事例でどのようにアナリティクスを使っているかという話をしました。
Adobeサミット
https://business.adobe.com/summit/adobe-summit.html

小川

リクルートがアドビさんに多額のお金を払っていた仲ではありますが(笑)

井水

当時はお客さんだったんですね!

小川

リクルートは当時すでに600ユーザー位いたし、アドビのツールをいれる会社って、それくらいのスケール感ですよね。今ならもっと増えていると思いますけど。

加納

中小企業がウェブに使えるお金って数十万円~数百万円ですけど、アドビがお客さんにしている企業さんの多くはマーケ予算時代がそれら以上だったりと、扱う金額は大きいなと。

小川

日本の大きな企業だと**(某製造業)や**(某製造業)とか**(某インターネット企業)はAdobe Analyticsを入れていて。あとは海外に本社があって、Adobe Analyticsをグローバルで契約しているから、日本のオフィスでも使っているケースもあるよね。

井水

**(某製造業)も小川さんがやっていたんですね。サイトの売上規模は数千億円ですよね。

小川

アドビはABテストのツールや広告配信のツールも一緒に販売出来るというメリットもありますよね。

加納

バナー作成にはPhotoshopを。

小川

Premierで動画も編集できます!と

一同:(笑)

小川

話は戻りますが、だからAdobe Analyticsの本が出ないんですよね。書ける人が少ないし、カスタマイズ性が強すぎるのと、書いたところで買う人も少ないから売れないんですよ。

加納

本で学んだところで、導入している会社で働いていないと使えないですからね。

小川

そうそう、「初心者向けAdobe Analytics」とか意味ないんですよね。順番が逆。Adobe Analyticsは学んでから会社に導入するんじゃなくて、すでに入れた会社が使い方のトレーニングを受けてカスタマイズすると。

井水

ツールを入れた後にもお金がかかるんですね。

小川

リクルートの時は私、他数名がアドビのトレーニングを受けて、社内600人に講師をしましたね。1年間600名、月2回4時間の勉強会でリクルート用に私がカスタマイズして講師していました。

井水

そこまでカスタマイズが必要なんですね。

加納

ええ。エンタープライズ向けのSaaSツールでは、ビックリする規模の労力と人がかかわているんだなと思いました。

井水

思ったよりも身近な企業で大きな話が動いているのだなと、驚きました。

小川

契約日のことは今でも思い出しますね。リクルート社内で決裁をとらないといけなくて、契約するのに1年半かかりましたね。12月の最終営業日、当時アドビに買収される前のオムニチュアの営業担当が朝から一日中リクルートの入り口にずっと立って待機していたんですよ。契約期限の最終日まで値段交渉をして、決済が通る・通らないというやりとりがあり、最後に「決裁、通りました~!」と。

井水

ドラマチック!最終的に受注できたんだから、そのオムニチュアの営業さんも凄腕ですね。

以上、今回は加納さんが代理店時代に受けた提案型ウェブアナリスト育成講座や、加納さんのアドビでの役割、小川さんがリクルート時代に経験したAdobe Analytics導入談等を話しました。最終回となる次回では、講座の最後に行う改善提案レポートがどのように今のお仕事で役立っているのか、加納さんの今後などを話しました。

関連リンク