石川 優貴 × 小川卓 対談 (3)アナリストたちの苦悩

lak dom合同会社 代表 石川 優貴 × 小川卓 対談 (3)アナリストたちの苦悩

HAPPY ANALYTICSの小川卓対談企画。
第14回のお相手は、小川卓が講師・主宰をつとめる提案型ウェブアナリスト育成講座第5期卒業生、lak dom合同会社代表の石川優貴 氏。全3回でお届けします。

対談のお相手

石川 優貴
いしかわ ゆうき

lak dom合同会社代表
滋賀県庁、国土交通省、NHK、LINE、メディア事業の責任者を経て、フリーランスとして独立。SEO戦略やコンテンツ制作を軸にデジタルマーケティング支援を通じて収益化に貢献。提案型ウェブアナリスト育成講座の第5期卒業生。
Twitter:@biwaco_yuki

※本対談は2021年12月上旬に感染症対策実施のうえ、オフラインで行われました。進行役はエスファクトリーウェブディレクター兼HAPPY ANALYTICS 広報のイミトモが務めます。

第1回では石川さんの公務員からウェブマーケティングへのキャリアを、第2回では提案型ウェブアナリスト育成講座について聞いてまいりました。最終回となる今回は、アナリストが仕事の仕方から苦悩までディープにフリーに語りました。

第3回 アナリストたちの苦悩

SEOからサイトやビジネスの改善へ

講座を受けてみて、ギャップを一番感じたのはどこだった?スキル的な部分で。

Googleアナリティクスの可能性を知らな過ぎたなと。SEOだとSearch Consoleで流入とランディングページを見るとか、コンバージョンを見るとか。その間は見ていなくて、サイトと向き合うんじゃなくて、良くも悪くもGoogleと向き合っていたんだなと。それがちゃんとユーザーさんと向き合えるようになったのは結構大きかったなと思いますね。

うんうん。

ユーザーさんがやりたいことは何だろうというのは考えていたんですけど、飽くまで妄想でしかなかったのが、しっかり分析できたといいますか・・

SEOはどうしても集めるところが主になっちゃうもんね。

その人にとってどんな情報を伝えたらいいのかっていうのを考えられるようになったのはよかったなと思っています。

まさにセグメントとかユーザーエクスプローラーとかね。SEOの場合、ユーザーのことを考えながらキーワードを設定して集めるんだけど、お客さんは集客することが目的じゃないわけだよね。たまにいるキーワードで1位になりたいっていうお客さんは例外として一旦おいておいて(笑) だからその先のコンバージョンが増えないとっていうのがあるので、サイト内の分析って同じくらい大切なんだなって思いますね。それができるようになると強みですよね。

実際、SEOやLP止まりだったお客さんがその先も分析するようになったケースってありました?

ありますね。売上のことをみたり、ウェブだけでなくビジネスとしてどうしていこうという議論ができるようになりましたね。

外から入るとまさにコンサルに近い形になっていきますよね。作業する人、書く人から、ビジネスでこうなるためにこういうのはどうですかっていう提案できるようになるとね。

そうですね。

SEOを始めた頃はライティングからとのことでしたが、今はどんな比率ですか?

一番最初はライティングをしていて、なかなか単価が上がらないですよね。そこからディレクターや分析っていう立ち位置になっていって、今はライティングは全然やらないですし、ディレクションも基本は他の人にやっていただいている感じです。私が分析してどのキーワードを攻めましょう、広告はどうしましょうみたいな話をして、あとはチームの人にやってもらうという流れに変わりましたね。

すごい変化ですね。今一緒にやっているチームの人がいるんですね。

ずっと一緒にやっているフリーランスの方たちがいますね。

一人だとできる限界が訪れるよね。それだけの仕事量があるわけですから。

いつ終わるかわからないので・・

その恐怖はあるよね。

フリーランスとキャパシティ

それで受けられる仕事は全部受けるという生活をしていると、ライフワークバランスがよくわからなくなってきますね。

そこで言えることは二つあって、別にアドバイスでもなんでもないですけど、ひとつは断る勇気は必要。あと工数が読めない仕事は気を付けたほうがいい。毎月定例があって、そのために事前に分析をしてというパターンのものとか、記事執筆とかは大丈夫。だけど、時間が読めないやつが入ってくるとそこが全部くずれていくから、リアルタイムに反応する必要がある案件は増やしすぎないほうが良いかなと。

たしかに

結局時間には限界があるじゃないですか。その中で突発的なことによってぶれないことが大事ですよね。

小川さんでも受けちゃうんですね。

私は受けちゃうタイプですね。99%インバウンドなもんで、費用感とか自分のスケジュールが合えばほぼほぼ決まるんですよ。なんとかなると思えることが大事ですよね。ほんと世の中ってうまくできていて、3つくらい減ると、2つくらいくるんですよ。

それは小川さんだから言えるのでは?って思っちゃうんですよね。

お気持ちすごくわかります。

井水さんもご自身で会社やっているから、そういうのあるんじゃない?

自分が出産して子どもができたら、そんなに無理なことを言うクライアントさんが来なくなりましたね。逆に気をつかってもらったりとか、「急がなくていいよ」と言ってくださる方もいて、そういう見られ方なんだなと。だから男性はちょっと違うのかも。

石川さんはどっち?多いの?それとも案件がきついやつなの?

両方ですね。

一番困るよね。そうだよね。片方だけだとどうにかなるもんね。

今年の前半は数が多かったんですけど、後半は要求が高いのが増えてきて。

さっきのCRMとかは時間が読めないよね。

小川さんは、面白くて受けちゃうって感じですか?

頼られることが嬉しくて受けちゃう感じですね。ものすごいキラキラした目でくるんですよね。「小川さんなんとかできませんか?」って。できるけど・・・楽しそうな案件だしな・・・と(笑) どうしてもダメな時は断るけどね。

あとは良い終わらせ方をするとかね。「落ち着いたらまた」っていうのは普通にあるし、メンタルが崩れる兆候があるのならば、年内で終わらせるものを1、2個作ることだよね。月20万円とか30万円減るかもしれないけど、そういう金額よりも自分のメンタルの方が100倍大事。メンタルが平気だと働いて取り戻すことができるけど、メンタル壊すといつ治るかがわからないのよ。それがまたプレッシャーになるからね。これ私も壊してから気づいたけど、本当にそれは思う。

はい。

石川さんに相談したいのであれば3か月後でも相談してくれると思うし、お金が重要じゃなくなると、なってから気づく。

アナリストは身体が資本ですね。

通知との向き合い方

ご結婚とかは?

昨年しまして。

一同:おめでとうございます!

先月ちょうど式も挙げまして。

めでたい!そういう意味でのプレッシャーはない?

奥さんも働いているので。講座で学んでいた時とか新しいことを学んでいるとすごく楽しいんですけど今仕事が多すぎて、slackを開くのもしんどいというか。

わかる!それ危ない直前。slackに通知が入っていること自体がプレッシャーでしょ?

画面にでるともう「あぁ」と。

3年前から通知は100%切ってて、LINEも切るから奥さんに怒られるんだけど。

一同:(笑)

スマートウォッチも1か月で止めた。

わかります。ずっと届きますもんね。

本当に、ばさーっと切ったね。

小川さんって休んでいるんですか?

土日の方がはかどるよね~。

やっぱりそうですよね。

通知もこないしね。でも、木曜日は打合せを入れない日ということで秘書の工藤さんに言って何もいれないようにしてもらっているので、そういったところで調整はかけているかな。土日のほうがはかどるよね~

通知がこないのではかどりますね。

ひどい話だ(笑) ブラックだな。

ブラックですね。

でも自分次第だから難しいのよね。なくなるっていう恐怖はわかる。私も感じるよ。来年どうなるかな~とか。

人にふる難しさ

ここは自分でやりたがりだと思ってて。だから増えていく一方になると思うんですよ。いかに人にうまくふれるかだと思うんですよね。

はい。

それをどこまで他の人に相談して任せられるか。意外と周りにもわかってくれる人っているので、ちょっとここのデータだけお願いとかね。手離れがいいものがあれば出して。

それを言うと、次がないんじゃないかって思っちゃうんですよね。小川さんって3つのことをかけ合わせていくっていうのと発信をしようってよく言っているじゃないですか。発信もできていないし、仕事もいただくだけなので自分でいただいている感覚がなくて、石川じゃないとだめっていう仕事がないと思っていて、ゆえに今あることを頑張るということをここ5年やっている感じで。

でも5年間やってきている中で続いているお客さんもいるわけじゃない?それは信頼関係を築けているからで、そうじゃないと続けられないと思うんですよ。そこで「ちょっとごめんなさい、1、2か月お休みください」は通ると思います。例えばお子さんができたら育休をとらないといけなくなるかもしれないわけで、そういうのと同じだと思うんですよね。そこまでして休まないといけないと思うんだよね。仕事を減らすのが苦手っていうのもわかるし、通知恐怖症になるというのもわかる。けど、うーん、なんだろうなぁ、通知恐怖症ってくるところまできている気がしてコップに水があふれそうな状態で、何か他の大きなクライアントとかがきたらやられちゃうパターンだと思うので、そうなると他のクライアントさんに迷惑かかっちゃうんだよね。それを自分のせいだと思っちゃう。

思います。

本当に1個か2個は相談してみてもいいと思う。定例でやっている業務とか。なくなることでいまやっている大変そうな案件に時間を割けるのであれば、自分で使っている時間を見てバランスをとるしかないんですけど。落ち着いたら3か月分のレポートをまとめて出すのでもいいかもしれないしね。実際にそれをするかしないかは置いておいて、調整するぞっていう意思決定を自分の中でするだけで、楽になるかもしれない。だから実際にやらなくてもいいんですよ。でも自分の中で恥ずかしいけど、申し訳ないけど、言ってみてもいいかなって思うだけで乗り切れるケースもあるんですよ。最後いざとなったらこの人は頼れるから言ってもいいかなとかね。その辺の気の持ちようでいける場合もあるしね。

気分転換と問題解決

この対談自体が気分転換になるといいけどね~。

実際のところ気分転換って難しくないですか?

むずい、無理無理。

小川さんは、何かしてますよーとかないんでしたっけ。

温泉に入ったって無理だよ。仕事のことが解決していなくて辛いときは、それをやらないと解決しないんですよ。一瞬気がまぎれることはあります、温泉に入って「いいな~」と。でもその3分後に「やらなきゃ~」と。唯一できるのは寝ること。

一同:あー。

睡眠をとりながら、刻み刻みでもいいので、気合でやる。自分が一月に乗り切った方法も結局お仕事をやり切ることだったんですよね。

はい。

石川さんの頭の中にも懸念リストの順番があるはずなんですよ。

ありますね。

身も蓋もない言い方をすると、一番上のヤツが終わらない限りはだめです。時間が足りないのであれば、それを終わらせるために、4番目と5番目を止められるかという話だし、知識的に足りないのであれば、誰かに相談しちゃったほうがいい。卒業生slackで答えてくれるかどうかとかね、わからないけどね。

はい。

経営にいくか、技術を磨くか

仕事で自分をブランディングしていくと、仕事はうまく進む一方で、自分の分身を作りづらくなるようなことを感じたりするんですよね。小川さんは以前の対談で卒業生に仕事をふっていければというところでおっしゃっていたと思うんですけど、それってある意味分身を作るっていうことだと思うんですけど、そのあたりでアドバイスとかありますか?

そもそも分身を作りたいか作りたくないかっていう話もあると思うんだけど、仕事をちゃんとふる能力って絶対に必要で、最後は自分が責任をとるっていうことだけを担保すればいいと思うんですよね。例えばレポートを作ってもらうっていう中にも切り分けられるところってあると思うんですよね。私なら数字を出してもらって、最後自分で見直して、お客さんに見せるフロントのところは自分でやると。その人にそれができるかっていうのを見極めるのが一番難しい。
提案型ウェブアナリスト育成講座の卒業生は最低限ここまでできるっていう担保がとれているんですよね。だからクライアントのサイトを見て、GAをみて、ある程度分析して基礎的な数字を作るとか、気づきを出すとか、完全にできなかったとしてもある程度できるというのがね。そういう意味でお支払いしつつお仕事を依頼していくっていう仕事に、石川さんもシフトしていくと思うんですよね。先ほどおっしゃったライティングはしなくなって上流の仕事に入ってきているという話があったけど、そのうち上流の仕事もやりきれなくなっていく中で一部お願いしていってっていうパスにしていくと思いますね。

経営の方にいくのか、職人の方にいって技術を磨いていくのかというのは今年1年とてもよく考えたところでした。自分の技術を高めつつ、人にふるっていう選択肢もあると思うんですが、基本的には分けたほうがいいじゃないですか。

そうそう。

小川さんっていう個人じゃなくてHAPPY ANALYTICSとして名を上げていくほうが経営的にはいいとか。でも自分がやりたいことはどっちなのかなと。

私は会社を大きくしていきたいというのはないから社員は雇ってないんですよ。人の人生背負えないから、プレッシャーでますます無理になってしまうのでね。でも私だけじゃないと出来ない仕事もあって、それは悪い言い方をするとブランド力を活かした仕事で、話す内容は一緒でも誰が話すのが重要かっていうことってあるじゃないですか。

もちろんです。

石川さんは社員を雇って大きくしていきたいとかあるの?

自分が本当にしたいことって何だろうって考えるんですけど、実は分析とか関係なくて、自然環境なんですよね。琵琶湖を綺麗にしたいというのが夢としてあって、分析は数字が好きだから稼げるというのがあってやっていて、やっていれば楽しいですけど、10年後20年後までやり続けられるかというとわからない感じですね。

環境って今の時点では稼ぎづらいですよね。SDGsとか出てきていますけど。

基本的には0円でやりたくて、こちらでお小遣いを稼げていればなと。そういう意味では手離れを良くしておきたいというのはありますね。ただ人を雇うとなると責任もそうですしプレッシャーもすごいので、そこに踏み切るときの勇気はまだないなと。

私もない(笑) でもそれができるようになると、こちらで稼いで、本当にやりたいことができますもんね。

アナリストたちの世界観

小川さんは将来的にどんなことをしていきたいんですか?

会社に経理がいるように、サイトを見れる人がひとりいるようになればいいなと。アクセス解析に携わって15年になりますけど、それを通じてやりたいことなんですよ。ありとあらゆる手法を使いながら、サイトを見ながら良くしていくことって大事で、だから私の分身を作りたいというのは全然思っていなくて、初心者に興味を持ってもらう、中上級者に講座をやると。その中でやってくれて、全体的にウェブがよくなればいいなというのが一番のゴール。提案型ウェブアナリスト育成講座をしながら、初級者に書籍を出したり、来年もGA4の本を出したりというのをしながらやっていくのって自分のブランディングにとっても大事だしね。

いいですね。

解析って悪さをしづらいんですよね。解析って面倒くさそうで参入ハードルが高めに見えるし、ユーザーを騙したりといった悪いことってできないので、比較的健全な分野だと思っているので、それをする人が増えるのがいいんでないの?と。それはずっとベースにありますね。

石川さんはそういうのはあります?

ウェブを良くしたいというか、コンテンツ側から良くしていきたいっていうのはありますね。

いいね、いいね。

検索した時に面白いコンテンツが上位に出てほしいですね。なんとか50選とか100選じゃなくて。

選んでないだろうってね。

ピンポイントにバンっていうのが上位にくるくらいの世界観にしたいというのと、検索を楽しいものにしたいっていうのがありますね。

最近不評ですからね。

そういうことをしていく上での分析にしていきたいなと。


以上、全3回にわたり、石川優貴さんと小川さん対談をお届しました。

ありがとうございました。

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